アルコールストーブ(通称:アルスト)は、燃料用アルコールを燃焼させて熱を得る小型の燃焼器具。
手のひらに収まるほどの大きさで、燃料を合わせても、重さはほとんど気にならない。
急がない日の火
自分の場合、調理は焚き火に任せ、アルストは湯を沸かすことに専念させることが多い。
朝、焚き火の横で一杯分のコーヒーの湯を沸かすくらいなら、大きな火力はいらない。
荷物を軽くまとめたい日には、バーナーとガス缶の代わりにアルストを入れると、もう一段身軽になる。
速さではバーナーに分があるが、時間に追われていない時には、あえてアルストを選ぶ。
何より惹かれるのは、その静かさ。
点火しても音らしい音はなく、ゆっくりと炎が立ち上がる。
火力は穏やかだが、そのぶん慌ただしさがなく、湯が沸くのを横目に、焚き火のそばでぼんやりしていられる。
自分なりの組み合わせ
同じアルストでも、真鍮製やアルミ製など素材に違いがあり、大きさや燃料の容量によって燃焼時間も変わる。
また、五徳を内蔵したものもあれば、五徳や風防を別に用意して使うものもある。
使い方に合わせて組み合わせを考えるのも楽しい。
空き缶で自作する人もいて、市販品にはないオリジナリティを出せるのもアルストならでは。
手をかざし、風を防ぐ
そんなアルストの炎は、明るい場所ではほとんど見えない。
火がついているかどうかは、少し離して手をかざし、伝わってくる熱で確かめる。
アルストを使う人ならたいていやる仕草だが、点火のたびに繰り返していると、ちょっとした儀式のようで気に入っている。
見えない火だからこそ、燃料の継ぎ足しには気をつけたい。
それに、少しの風でも炎が横に流されてしまうため、火をつける前に風防で囲う。
さすがに風の強い日は、アルストの出番はお預けになる。
風防を立てて五徳をのせる準備にはひと手間かかるが、その段取りも嫌いではない。
長く付き合える
繰り返し火にあぶられた風防や五徳には、焼け色が重なって味が出てくる。
構造が単純で壊れる心配が少ないのも、長く使い続けている理由のひとつ。
アルストの火は、小さく、見えにくく、風にも弱い。
その頼りなさが、そのまま一杯のコーヒーにかけるゆとりになる。